新型コロナウイルス感染症

  • 2020.02.27 Thursday
  • 23:15

 新型コロナウイルス感染者数の増大とともに、感染経路が特定できないケースが増えてきています。また無症状の感染者も確認されており、今後新型コロナウイルスは身近にある感染症として誰もが感染のリスクに曝される状況になってきています。「かぜ」症状で診療所を受診される方の中にも、新型コロナウイルス感染症の方が紛れ込んでいる事を前提とした対応が必要となってきます。 

 その中で「重症例を見逃さない診療」すなわち「コロナウイルス性肺炎」にかかっているかどうかの見極めが特に重要となります。感染症学会から公表されている論文2編とその他の症例報告を参照し、12例の「コロナウイルス性肺炎」について分析しその特徴を以下にまとめてみました。

ヽ院熱といった「かぜ」症状以外に筋肉痛、呼吸苦の症状を伴うことが多い、

呼吸回数が1分間あたり20〜30回と通常より多くなっている、

G抉蠅任△辰討眥或粘錣埜撞朮擦琉枉錣聴取できない場合が多い(80%以上)、

ざ刺凜譽鵐肇殴鵑任藁沼Σ芝挂遒某蚕甕董△垢螢ラス影を示す場合が多い(通常のウイルス性肺炎と似ている)、

シ豈娶〆困任惑魴豕紊論犠鑒楼呂任△襪箸海多い。

 

 胸部レントゲンで肺炎像が確認できなくても、その他の症状が当てはまるなら「コロナウイルス性肺炎」を疑い専門医療機関への転院を検討する必要があります。(SARSでは肺炎に対する胸部レントゲン写真の感度は60%前後と偽陰性になる可能性がかなり高いことをがわかっています)

 

 医療従事者やかぜ症状以外での受診者に対する安全確保も重要な課題であると考えています。こまめな換気、塩素系空気清浄機の活用、アルコール消毒による環境整備、動線の異なった待合室の確保など取り組めるところから実施しております。

 

新型コロナウイルス感染症

  • 2020.02.09 Sunday
  • 21:44

 新型コロナウイルスの感染が拡大の様相を呈しています。これまでヒトに感染したことがないウイルスであるため、我々はこのウイルスに対して免疫を持っておらず、世界的大流行になる可能性があります。さらにワクチンや治療薬が無いため、実施できる対策が限られています。検疫の強化による水際での防止、また個人レベルでは「手洗い」「うがい」「マスク」を励行することが重要であると言われています。 「手洗い」「うがい」「マスク」が本当に効果があるのか疑問に思い論文を調べてみました(JOHO,Vol1.33,217野田龍也氏)。

  手洗いプログラムに参加したグループと非参加のグループを比較すると、参加グループは呼吸器感染症の症状を訴える割合が45%減少したと報告されています。うがいを行ったグループでは行っていないグループに比べ、かぜにかかる割合が36%減少したと報告されています。「手洗い」「うがい」は「かぜ」の予防に効果があることが示されています。「マスク」に関しては医療用マスク(サージカルマスク、N95マスク)は「かぜ」に対する効果があるかもしれないといった段階のようです。現状ではこれら「手洗い」「うがい」「マスク」を励行するのが個人としてできる最大の対応であると考えます。(一般のコロナウイルスはかぜの原因ウイルスの一つです)

 

 未知の感染症に対する不安は時にヒトをパニックに陥れます。病気そのものに対する対策はしっかり行う半面、病気がもたらす恐怖についてはそれに支配されることなく情報を正確に吟味し、パニック的行動にならないよう心がける必要があると思います。

 

 

 

 

インフルエンザワクチンの効果(2020年1月)

  • 2020.02.02 Sunday
  • 22:11

 インフルエンザワクチンの効果について検証しました。期間は2020年1月4日から1月31日までです。インフルエンザ症状を訴え来院し迅速検査を受けられた方は218名でした。ワクチン接種の有無によりインフルエンザに罹患した方の数を表にしました。

ワクチン未接種 ワクチン接種済
インフルエンザ陽性  74名 58名 132名
インフルエンザ陰性  46名 40名  86名
120名 98名 218名

 Test negative法によりワクチンの効果を計算すると、Vaccine effectiveness(V.E.)は10%でした。

前月と比べワクチンの効果が激減しています。ワクチンが効きやすいといわれているAH1pdm09が流行しているのにワクチンの効果

が低下している理由は不明です。

 また昨年度と比べ、当院でインフルエンザ陽性と診断された方は半減(昨年度230名)しています。兵庫県感染症情報センター

のデータでもインフルエンザ患者数は昨年度の半分以下になっています。特に西宮市での発生数は兵庫県内で最も低くなっています。

 

 インフルエンザの流行に影響を与える環境要因は気温や相対湿度(湿度計で測定する湿度)ではなく、絶対湿度であることがいくつかの論文で報告されています。絶対湿度とは空気中にある水分の絶対量のことで、相対湿度に比べ気温に関係なく正確に空気の湿り気を表しています。昨年と比べ今年の1月の平均気温が2.1度、相対湿度が2%上昇しており、昨年より絶対湿度が高くなっていることが予想されます。そのためインフルエンザ流行の規模が昨年度より小さくなっているのかもしれません。

 

 新型コロナウイルス感染症がさらに拡大する気配を見せています。手洗い、うがい、体調管理などお気をつけください。

インフルエンザワクチンの効果(2019年12月)

  • 2019.12.28 Saturday
  • 06:50

 インフルエンザワクチンの効果について検証しました。期間は2019年12月1日から12月28日までです。インフルエンザ症状を訴え来院し、迅速検査を受けられた方は158名でした。ワクチン接種の有無によりインフルエンザに罹患した方の数を以下に示します。

ワクチン未接種 ワクチン接種済
インフルエンザ陽性 61名 21名 82名
インフルエンザ陰性 42名 34名 76名
103名 55名 158名

 

Test negative法によりワクチンの効果を計算しましたところ、Vaccine effectiveness(VE)は57.5%%でした。

昨年の同時期と比べインフルエンザ陽性の方は3.4倍(今年82名/昨年24名)と大幅に増加しています。

 

ワクチンは昨年に比べはるかに高い効果を示していることが確認されました。(昨年のV.E.はマイナス33.8%)

V.E.が57.5%とは「ワクチンを接種せずにインフルエンザに罹った方100名が、仮にワクチンを接種していれば57.5%(57〜58人)が罹らずに済んだ」ということになります。

昨年と比べワクチンが高い効果を示したのは、今年度はワクチンが効きやすいタイプ(AH3pdm09)が流行しているためだと考えられます。(昨年度はワクチンが効きにくいA香港型が流行していました。)

 

 年末年始で人の動きが活発になったあと、年が明けて、仕事、学校が再開されるとインフルエンザは本格的な流行期に入ります。

今シーズンは大流行が予想されています。ワクチンを接種されなかった方は厳重に、接種された方も油断せず、手洗い、うがい、鼻うがいを行って予防してゆきましょう。

 

感染後過敏性腸症候群

  • 2019.12.21 Saturday
  • 18:24

 長期間にわたりお腹の症状(下痢、便秘、腹痛、腹部不快感など)が続く「過敏性腸症候群」という疾患があります。ストレスなどが原因で腸の運動異常、知覚異常が起こり、様々なお腹の症状を引き起こすと考えられています。

 

 「過敏性腸症候群」が急性胃腸炎後に発症する場合を「感染後過敏性腸症候群」と呼ばれます。感染前には「過敏性腸症候群」の症状がなかった方が、急性胃腸炎後に「過敏性腸症候群」を発症する状態と定義されています。

 

 当院でもこれまで「感染後過敏性腸症候群」に当てはまる方が22名おられました。男女比は5:17で女性に多く、平均年齢は33.7歳で、全体の68%が20、30歳台の方でした。「感染後過敏性腸症候群」を発症する危険因子は「若年」「女性」と論文で報告されていますが、それに合致する内容でした。急性胃腸炎の原因は「ウイルス性」が11名、「細菌性」が10名、「赤痢アメーバー」が1名でした。発症後に症状が持続する期間は、1か月未満が9名、1か月以上1年未満が8名、1年以上が5名おられました。自然に落ち着く場合と、長期化する場合があり、後者ではしかるべき治療が必要になります。症状として全員が「下痢、腹部膨満、腹部不快感」で悩まされていました。

 

 ウイルスや細菌が腸の粘膜に炎症を起こすことによって腸粘膜の免疫系が乱れ、それにより腸の運動異常、知覚異常が引き起こされることが原因と考えられています。症状が長期的に持続している方は通常の「下痢型過敏性腸症候群」と同じ治療を行いますが、難渋するケースも多いです。

 

 

インフルエンザが流行しています

  • 2019.12.05 Thursday
  • 20:28

 インフルエンザが流行しています。昨年11月1日から12月5日の約1か月でインフルエンザにかかられた方は0人でしたが、今年度はすでに36名(A型35名、B型1名)の方がインフルエンザにかかっておられます。8月31日のブログで予想していた通りの流行になりました。

 

 現時点ではA型のうちH1N1pdm09タイプが流行しているとの情報です。このタイプのインフルエンザにはワクチンが有効なため、今シーズンはワクチンの効果が高いと思われます。

 

 感染症学会が「抗インフルエンザ薬の使用について」のガイドラインを発表しました。タミフルは症状の重症化を抑え、発熱とウイルス排泄期間を短縮させ、致死率も低下させるとの評価です。ゾフルーザはB型に対しては他の薬剤より優れているが、それ以外はほぼ同等との評価です。逆に耐性ウイルスを作り出し、症状が長引く可能性が指摘されています。そのためゾフルーザの使用は積極的には推奨されなくなっています。当院でもタミフルあるいはイナビルの使用を原則にしています。

 

 

腹部症状と漢方ー桂枝加芍薬湯

  • 2019.10.18 Friday
  • 20:04

 「放屁」が多くて困っておられる9名の方のうち、7名の方が同時に「腹部膨満」の症状も訴えておられました。そして桂枝加芍薬湯で「放屁」の回数が減ると、同時に「腹部膨満」も改善しています。 「おならが出過ぎているのに、お腹がはる」、「おならの回数が減ったら、お腹のはりがとれた」ということになります。文章の前後が矛盾している感じがしませんか?

  

  ストレスがかかると腸を動かす筋肉は小刻みで不規則に収縮するようになります。あたかも「こむら返り」で足の筋肉が痙攣を起こしているかのような動きです。そのため1回の「放屁」で排出できるガスの量は少なくなります。また小刻みに動くため「放屁」の回数は増えてしまいす。その半面全体としてのガス排出量は十分ではなく、出し切れなかったガスがたまり「腹部膨満」となります。「おならが出過ぎているのに、おなかがはる」のはこのためです。

 

  桂枝加芍薬湯は腸の筋肉を弛めることにより、「不規則で小刻みな」動きを「規則的で緩やかな動き」にしてくれます。これによりガスをスムーズに送り出し、一定量のガスを貯めてから排出することができるようになるため「おならの回数が減って、お腹のはりがとれる」ようになるわけです。

 

 

 

腹部症状と漢方ー桂枝芍薬湯

  • 2019.10.17 Thursday
  • 14:19

  腹部の不快な症状に対して使用頻度の高い「桂枝加芍薬湯」の有効性について検討しました。

「桂枝加芍薬湯」は「腹部膨満を伴う、しぶり腹、腹痛」に有効な漢方薬と言われています。芍薬、甘草、桂皮、大棗(たいそう)、生姜(しょうきょう)の5つの成分を含んでいます。

  この「桂枝加芍薬湯」で治療を行った50名の方(男性14名、女性36名)の方に対する効果を検証しました。有効35名(70%)、無効15名(30%)でした。これまでの論文と同程度の有効率でした。腹部膨満と有効率を調べてみました。

        症状 有効 無効
腹部膨満あり + しぶり腹/腹痛/下痢/放屁 15 23
腹部膨満なし + しぶり腹/腹痛/下痢/放屁 20 27
         計 35 15 50

「 腹部膨満あり」の方より「腹部膨満なし」の方のほうが有効率はやや高めでした。(65% vs 74%)

腹部膨満以外での症状では「しぶり腹」の方に対するで有効率が88%(7名/8名)と最も高く、 次いで

「腹痛」74%(23名/31名)、「下痢」66%(23名/35名)でした。効能のとおり、「腹痛」、「しぶり腹」に対する

有効性は高く、「下痢」に対する有効性はやや低い結果となっています。

また「放屁」が多くて困る方に対する有効性は56%(5名/9名)でした。

 

  「放屁」に対する桂枝加芍薬湯の有効性は一見あまり高くは見えませんが、「放屁」で困る方を「放屁のみ」の方と

「放屁+ゲップ」に分けると、「放屁のみ」では100%改善していました、反対に「放屁+ゲップ」の方は有効性0%でした。

「放屁のみ」の場合、腸の問題が主のため桂枝加芍薬湯が効果を発揮しますが、「ゲップ」を伴う場合には空気嚥下症の問題も絡んでくるため、桂枝芍薬湯のみでの対応が困難になっているのではないかと推測しています。

  

ストレス以外にも「不安感」などの感情が空気嚥下症の原因にもなることから、これに対する対応も必要ではないかと考えています。

 

 

 

 

オーストラリアのインフルエンザ(2019年度)

  • 2019.08.31 Saturday
  • 17:32

 9月に入り明日から2学期が始まります。これに合わせて毎年インフルエンザによる学級閉鎖が全国で散発的に報告されるようになります。夏休みが終わり集団生活が再開されたことで、一部の感染が全体に広がることが原因と考えられています。そろそろ今冬のインフルエンザ対策を考えていかなければならない時期になりました。

 今シーズンの流行状況はどうなるのでしょうか? それには南半球でのインフルエンザ流行状況が参考になります。南半球と北半球のインフルエンザ流行状況は関連性があると言われています。実際、2017年度オーストラリアでA,B型が混在して大流行しましたが、そのシーズンは日本でも同様の大流行が起こりました。2018年度オーストラリアではインフルエンザ発生件数は例年より少なめで、A型を中心とした流行でしたが、日本でも同様な流行状況となりました。

 

 シドニー モーニング ヘラルド紙(2019年7月1日号)によると、「今年度のオーストラリアでのインフルエンザ流行は例年より早く始まり、異常な高率(abnormal high numbers)で起こっている」「NSW州では現時点で3.2万人がインフルエンザ陽性と診断されており、この数は昨年度の全シーズンを通してのインフルエンザ陽性者の数の2倍にすでに達している」

 

 今シーズンの日本でのインフルエンザはオーストラリアと同様に例年より早く、流行期に入り、感染者数も多くなる可能性が高いと考えています。

 

腹部膨満その5

  • 2019.08.30 Friday
  • 06:51

「腹部膨満その4」からの続きです。

 治療効果不明(2回目の受診が無い方)あるいは無効であった方の割合をガスの貯留部位別にまとめてみました。

 

胃のみ:不明+無効=7名(41%、7/17)、   有効59%

大腸のみ:不明+無効=21名(62%、13/21)、 有効38%

胃と大腸:不明+無効6名(21%、6/28)、  有効79%

 

 胃のみにガスが貯留している方にはガスコン(胃のガスを吸着する)とガスモチン(胃の蠕動を亢進させ胃のガスを腸に送り出す)が効果的でした。胃と大腸にガスが貯留している方では治療効果は高く、大建中湯、ガスコン、ガスモチンが効果的でした。

 大腸のみにガスが貯留している方は意外と治療が困難でした。何らかの対策を検討しなければなりません。

 

 小腸にガスが貯留している場合は要注意です。腸閉塞や腹膜炎(癌性、炎症性)の方が含まれています。入院や手術になることもあり慎重な対応が必要となります。腸閉塞の前段階(サブイレウス)には大建中湯が効果的でした。それ以外にも小腸にガスが貯留しやすい病態としてはSIBO(小腸内細菌増殖症)やIBS(過敏性腸症候群)などがあり治療困難なことが多いです。内服薬以外にも食事療法、生活習慣の改善など総合的な対策が必要となります。